「辞めたい」と思ったことがある病院薬剤師は、おそらく少なくないはずです。
責任の重さ、人間関係、体力の限界――理由はそれぞれ違っても、「この仕事を続けるべきか」と悩む瞬間は誰にでも来ます。
この記事では、3か所の病院で病院薬剤師として合計13年働いてきた立場から、「辞めたいと思った瞬間」と「それでも病院薬剤師を選び続けてきた理由」を正直に書きます。
辞めたいと思った瞬間
新卒半年で、一人当直が始まった
最初の病院に入って半年が経つ頃、当直シフトに入り始めました。
夜間は基本的に薬剤師一人。医師・看護師からの問い合わせ、入院患者への対応、緊急の払い出し――これを一人でこなします。研修が十分に終わっていない時期から、そのプレッシャーにさらされました。
医師から専門的な質問が来る。即答できない。電話口の向こうで明らかに不満そうな気配が伝わってくる。焦り、調べ、なんとか答えても「もっと早く」と言われる。それが何度も続きました。
「自分がいなければよかったのか」と思うような夜もありました。
看護師からミスを押し付けられた
病院の中では、薬剤師は必ずしも発言力がある立場ではありません。
ある日、薬剤に関するインシデントが起きました。状況を整理すると、薬剤師側に問題はありませんでした。でも記録のされ方、その後の話し合いの流れ、上司への報告内容――少しずつ「薬剤師側のミス」という形に収まっていくのを感じました。
納得できなかった。でも声を上げることが難しい雰囲気があった。
こういう経験が積み重なると、「なぜここで頑張っているのか」が分からなくなっていきます。
体力が限界だった
当直は月に複数回。明け番でもそのまま日勤をこなすことがあります。夜中に呼ばれ、仮眠もとれず、翌朝の業務をこなす。
それが何年も続きます。
体力の問題だけではありません。精神的な疲弊が蓄積していく感覚があります。責任やストレスの重さに対して待遇が見合っていないと感じたとき、「この生活、いつまで続けるんだろう」という思いが深夜に浮かぶことが、一度や二度ではありませんでした。
それでも病院薬剤師を続けている理由
臨床の現場でしか得られない経験がある
病院薬剤師として働くと、薬が「患者の体の中で何をしているか」を直接見ることができます。
処方提案が通って、患者の状態が改善したとき。副作用を早期に気づいて、医師に報告できたとき。そういう瞬間に「自分は医療に関わっている」という実感があります。
これは調剤薬局では得にくい感覚だと思っています。
専門性を磨ける環境がある
病院には定期的な勉強会、症例検討会があります。チーム医療の中で他職種と議論することで、薬学的な知識が実臨床と結びついていきます。
認定薬剤師・専門薬剤師の取得も、病院という環境にいることで実績を積みやすい。「薬の専門家」として深くなりたいなら、病院は向いている職場です。
転職の武器になると気づいた
病院薬剤師の臨床経験は、転職市場でも評価されます。
実際に転職活動をした際、病院での経験――ハイリスク薬への対応・TDM・チーム医療の実績――が強みになりました。「病院経験があるなら」という言葉を複数の現場で受けました。
辛い時期を耐えた経験は、次のステップへの資産になります。
「辞めたい」気持ちにどう向き合うか
辞めたいと思う理由が「今の職場の問題」なのか「病院薬剤師という仕事自体の問題」なのかを、まず切り分けることが大事だと思っています。
職場環境・人間関係・給与待遇が原因であれば、転職で解決できる可能性が高いです。病院を変えるだけで、同じ「病院薬剤師」として劇的に働きやすくなることもあります。
一方で、夜間対応・責任の重さ・プレッシャーそのものが合わないなら、職種や業態を変えることが正直な選択肢です。
どちらにしても、「ただ我慢して続ける」だけが選択肢ではありません。まず選択肢を知ることが、気持ちを楽にする第一歩です。
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